【労働契約法20条】
(期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止)
第二十条 有期労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件が、期間の定めがあることにより同一の使用者と期間の定めのない労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件と相違する場合においては、当該労働条件の相違は、労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下この条において「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない。
20条裁判Q&A
日本で初めて、「正社員と非正規社員の労働条件の相違は、いくつかの条件を考慮して不合理と認められるものであってはならない」とする法律=労働契約法第20条が2012年8月に定められました。この法律を職場に適用せよ、との裁判がはじまっています。郵政でも全国で12人の期間雇用社員が原告として立ち上がりました。みなさん、応援してください!
裁判で求めているのは2点です。
@ 原告の12人がそれぞれ、正社員の給与規程、就業規則を適用される地位にあることを確認すること。
A 過去2年の給与のうち正社員に支払われ、期間雇用社員の12人には支払われていない各種手当を支払うこと。
Q1 正社員の就業規則等が適用される地位とは?
正社員と同じ業務に従事し、業務の内容にともなう責任も同じように問われる期間雇用社員について、休暇や諸手当が正社員と同等の待遇を受けるべき地位にあることを確認することを求めています。
現場では「どうせバイトだから」とあきらめの言葉もときどき聞かれます。この訴訟は「期間雇用」とは名ばかりで、何度も契約更新をくり返し、同じように働き、同じように責任も問われていることに着目しています。
Q2 期間雇用社員と正社員がなにからなにまで同じとは言えない、との意見もあります。
労働契約法20条は、雇用期間が有期の労働者=期間雇用社員と無期の労働者=正社員の業務の内容や責任の程度と、昇進や転勤の範囲について完全に同一であることを要件とはしていません。違いがある、あったとしてもそれによる処遇の違いが妥当なのか?個々の労働条件ごとにその相違(格差)が合理的であるかないかを判断するとしています。
Q3 なにからなにまですべて同じにしろ、と求めているの?
私たちは、基本的な要求として期間雇用社員の希望者全員正社員化を求めていますが今回の裁判は、業務の内容や責任の程度、今後の昇進の可能性や転勤の有無を考えたとしても、現に同じ仕事をしていて、この違いはあまりにひどいのではないかと見られる内容に絞りこんだ訴訟です。これらの内容は労働契約法20条のいう「不合理と認められるもの」ではないのか、という訴えです。
Q4 具体的にはなにを求めているの?
休暇としては、業務の夏期繁忙、冬期繁忙につきながら期間雇用社員には与えられていない夏期・冬期休暇の適用を求めています。また、病気休暇について、正社員は有給で最高180日、期間雇用社員は無給で年に10日間のみであり、今後は同等に適用することを求めています。
(賃金としては次の各種の手当です)
@ 外務業務手当・・二輪車や四輪車による外務作業について一日あたり570円から最高1420円です。
A 郵便外務精通手当・・外務正社員について評価段階に応じて月額最低5100円です。
B 郵便内務精通手当・・内務正社員について評価段階に応じて月額最低4000円です。
C 年末年始勤務手当・・12月29日〜31日まで、一日4000円、1月1日〜3日まで一日5000円です。
D 早出勤務等手当・・正社員850円、期間雇用社員300円です。
E 夜間特別勤務手当・・正社員が午後10時から翌日午前6時に勤務した一回につき最高3500円が支給されます。
また一勤務指定期間に深夜勤務が9回を超える場合は8000円が加算されます。期間雇用社員には支給されていません。
F 祝日給・・正社員が祝日勤務すると通常の日給分の賃金(基本給)とは別に135%の祝日給が支給されます。
期間雇用社員には通常の日給分と35%の割増賃金が支払われるのみです。
G 夏期・年末手当・・期間雇用社員には基礎賃金(基本給合計額の6ヶ月平均額)をあらかじめ3割に減らして計算されています。
H 住居手当・・正社員について月額最高27000円が支給されています。期間雇用社員には支給されていません。
I 扶養手当・・正社員ついて月額12000円が支給されています。期間雇用社員には支給されていません。
Q5 請求額はどれくらい?
この訴訟の請求は上でいうように絞りこんだ内容です。勤続を重ねることによって大きく開いていく基本給部分を請求していません。手当のみです。それでもどの原告請求分も一人一年で100万円を超えました。それの過去2年分です。
Q6 そんなに支払ったら会社がつぶれるのではないか?
非正規雇用労働者が増加した背景には、「コスト削減」があります。正社員と期間雇用社員との間にある「格差」によって生じた不利益は、そもそも会社が支払うべき金額であると言えます。格差をそのままにして会社は毎年、利益をあげており、現に民営化以降、莫大な内部留保を抱えてきました。その一部をあてれば支払いは十分可能です。
Q7 2014年4月からの業績手当にも影響があるのでは?
業績手当が始まっていますが、期間雇用社員は対象外であり「がんばるものが報われる」とは笑わしてくれます。郵政ユニオンとの交渉で本社は「期間雇用社員にもなんらかの制度を検討したい」と言明しましたが依然明らかではありません。Q4のところの@ABは業績手当原資として組みこまれているものですから、この訴訟の請求が認められれば、業績手当制度に根本的な影響を与えるものになります。
Q8 格差を是正するなら正社員の処遇が下げられるのでは?
そうではありません。逆に格差を是正してこそ正社員の労働条件も守れるのです。
4月から(新)一般職の採用がはじまりました。会社は、近い将来のあるべき姿として社員全体の4割が非正規雇用、残る正社員のうち65%を年収最大450万円程度の(新)一般職に変えていこうとしています。非正規雇用の拡大が限界となり今度は正社員のあり方に手をつけてきたのです。日本郵政の株式上場への準備が始まる中、格差を拡大して総人件費を削減させようとする流れが強まっています。この流れを断ち切るために、有期雇用労働者と無期雇用労働者との均等待遇が必要となっています。これは、期間雇用社員か正社員かにかかわらない郵政で働く労働者全体の問題です。
Q9 「自分の会社を訴えるってどうなの」という声もあります
原告は全員郵政産業労働者ユニオン組合員です。これまで私たちは、会社との間で要求交渉を重ねてきました。「違いは認める、しかしこれほどの違いはおかしいのではないか」本訴訟の主旨と同様の投げかけを行ってきました。しかし、会社は要求にこたえなかったのです。運動が実って2010年には時の大臣が「希望する者原則正社員化」と国会で言いました。しかし2度の登用で正社員化されたのは9496人のみです。満を持しての訴えです。裁判などしたら契約更新されないのではとの声もあります。法律としてそんなことはできません。
Q10 この訴訟が本当に未来を切りひらくの?
原告12人の利益になることにとどまりません。原告勝利となれば労働契約法20条違反となった就業規則は違法で無効になります。ですから期間雇用社員全員に波及するのです。働く者を分けて格差をつけて経営がうまい汁を吸いとる仕組みを打ちこわして、期間雇用社員−正社員が団結して全体の処遇を引き上げていく一歩をふみだすのです。自画自賛ではありません。この訴訟の影響は必ず他の企業にも及びます。20条が生きた法律として適用されるのです。若者が社会に出るとき、半数近くが有期雇用で低待遇無権利などという日本の異常な状況を変える・・未来を変えるのです。